福島英『ポピュラー・ミュージックのためのヴォーカルトレーニング』中のヴォーカリスト・曲目リスト

長い。このひと言に尽きるが、特に日本の歌手と曲について多く挙げられていること、各歌手の学ぶべきポイントが詳しく書かれていることという点では、この本は他の福島英の著作に比べても相当密度の高いものといえると思う。実際字が小さくて多い。

ヴォーカリストには、いろんなタイプがいます。オリジナリティ、個性だけを売りものにしている人もいますが、声に関しては、次のようなヴォーカリストを一度、聴くことをお勧めします(日本人は曲による出来、不出来が多いので、ここに掲げた曲を参考にしてください)
日本人
1 さよならをもう一度/尾崎紀世彦
2 霧の摩周湖布施明
3 愛は限りなく/村上進(カンツォーネ
4 六月の詩/カルメン・マキ
5 愛のメモリー松崎しげる
6 影を慕いて/森進一
7 川の流れのように美空ひばり
8 あんたのバラード/世良正則
9 恋の季節ピンキーとキラーズ
10 二人でお酒を/梓みちよ
外国人
1 シャルル・アズナブールシャンソン 男性)
2 ミルバ(カンツォーネ 女性)
3 エディット・ピアフシャンソン 女性)
4 ジャニス・ジョップリン(ロック 女性)
5 クラウディオ・ビルラ(カンツォーネ 男性)
6 アマリア・ロドリゲス(ファド 女性)
7 マヘリア・ジャクソン(ゴスペル 女性)
8 メルセデス・ソーサ(フォルクロ―レ 女性)
9 ビリー・ホリディ(ジャズ 女性)
10 ルイ・アームストロング(ジャズ 男性)
11 エラ・フィッツジェラルド(ジャズ 女性)
12 パティ・ラベル(ゴスペル 女性)
13 エンゲルベルト・フンパーディンク(ポップス 男性)

次のように外国人ヴォーカリストが日本語で歌った歌を聴くと、その深さと技量、音楽性がよくわかります。

1 夜明けの歌、愛の別れ/クラウディオ・ビルラ
2 ウナセラディ東京/ミルバ
3 アドロ/グラシェラ・スサラーナ

さらに、日本のヴォーカリストの歌った歌を外国人ヴォーカリストまたはグループが歌ったもの(カバー)を聴いてみるとよいでしょう。たとえば「上を向いて歩こう」(坂本九)は、「スキヤキ」として全世界でカバーされています。

たとえば、スタンダード・ナンバーのもの、クリスマス・ソングなど、同じ曲を違うヴォーカリストが歌っているのをすべて聴き比べてみましょう。
・・・
たとえば「SIKENT NIGHT(聖しこの夜)」をマヘリア・ジャクソン、TAKE6マライア・キャリー、グラディス・ナイト&ピップス、「WHITE CHRISTMAS」をオーティス・レディング、エラ・フィッツジェラルドグロリア・エステファン、マイケル・ボストンで聴き比べてみましょう。ピアフの没後30周年として、「愛の賛歌」を多くのヴォーカリストがカバーしたものなども出ています。


声やフレージング、曲全体の構成について、歌の基本的なことはすべて、そのなかに含まれています。一流のヴォーカリストがその歌であなたにすべてを教えているのです。耳を澄ませ、心を開いて感じてみてください。
 次の順に学ぶことをお勧めします。
1 オペラ(発声、ひびき)
2 カンツォーネ(フレーズ、構成、メロディ)
3 シャンソン(言葉、フレーズ)
4 ゴスペル(息、発声、ひびき)
5 ジャズ(アドリブ、センス、声のバランス)
6 オールディーズ(高音、ひびき)

お手本としたいヴォーカリストと曲の紹介

1 カンツォーネ
イヴァ・ザニッキ(「心遥かに」「涙のさだめ」「愛の別れ」)
魅惑的なハスキー・ヴォイスを駆使して、豊かな表現に富んだ歌の世界を展開しています。
ジャンニ・モランディ(「貴方にひざまづいて」「涙のさだめ」)
実力、人気ともの備え「カンツォーネの貴公子」と称された。歌のなかに満ち溢れるこの圧倒的なパワー・・・・・それは声の力と技術を抜きにはなしえません。
◆ミルバ(「愛遥かに」)
ヴォリューム感あふれる声でスケールを大きく歌いあげます。イタリア国内はもちろん、世界各国で高い評価をうけています。
◆クラウディオ・ビルラ(「愛の別れ」「青空に住もう」「夜明けの歌」)
カンツォーネの王様。多くの歌手から目標にされました。「愛の別れ」「夜明けの歌」は日本語での歌唱です。この人が歌えば、こうも変わるのです。この声の深さと強さ、高音域での輝くような声質は世界のヴォーカリストのお手本です。

2 シャンソン
◆アダモ(「夜のメロディ」「インシャラー」)
日本にファンが多く、数多くのヒット曲があります。独特の声を完全にコントロールして、自分の世界をつくりあげてます。
シャルル・アズナブール(「イザベル」)
シャンソンの世界の主人公を数多く演じて見せます。「イザベル」では名前を呼び続けるところから、歌にそのまま入ってます。
エディット・ピアフ(「愛の賛歌」)
不出生のシャンソンの女王。パリに大道芸人の娘として生まれ、幼い頃から道端で歌っていました。コクトーは彼女を評して「ピアフが読めば電話帳でも感動的に聴こえるだろう」といったといいます。
「愛の賛歌」は飛行機事故で死亡した恋人に捧げられた歌だとされています。

3 フォルクローレ
メルセデス・ソーサ(「暗いはしけ」)
フォルクローレの母」。大地の温かさ、鼓動を感じさせる。限りなくふところの深い歌は、世界各国で絶賛されています。
 
4 ファド
◆アマリア・ロドリゲス(「暗いはしけ」)
1956年パリのアランピア劇場でのリサイタルの大成功によって世界的に『ファド(ポルトガル語で歌、運命を意味する)の女王』の名を不動のものにしました。

5 ロック・ポップス
ジャニス・ジョップリン(「move over」)
その独特のしわがれ声で叫び、ささやき、泣き、語り、聴き手を自分の世界にひきずりこむ。不世出の女性ロッカーとして伝説的な存在となりました。
◆エンゲルベルト・フンパーディング(「ウィズアウト・ユー」「イル・モンド」「リリース・ミー」)
ストレートに壮大な歌の世界をつくり上げます。音域、音量とも、限りを知らないといった感じのする声です。技術に学ぶところ大でしょう。
◆グラシェラ・スサーナ(「アドロ」)
アルゼンチン生まれ。菅原洋一にスカウトされて日本でデビュー。「アドロ」「シバの女王」など、数多くのヒット曲を持っています。決してうまくはない日本語なのになぜ、日本人の心をとらえてやまないのはなぜでしょうか。フレーズの大きさ、歌唱力は、ずば抜けています。
◆ジョルジア(「リヴ・フォーエヴァ」)
イタリアの新進ヴォーカリストです。「パバロッティとそのフレンズ2」で共演しており、郡を抜く歌唱力を見せてくれています。

6 日本のポップス
尾崎紀世彦(「さよならをもう一度」)
日本人ばなれした歌唱力の持主です。フレーズの膨らませ方、歌全体のめりはりのつけ方に注意して聴いてみましょう。
カンツォーネのようなフレーズと、日本語的な言葉の処理をうまく両立させています。
カルメン・マキ(「六月の詩」)
日本のロック・ヴォーカリストの草分け的存在でした。
もともとは寺山修司主催の劇団「天井桟敷」に所属していましたが歌手に転向後、歌謡曲をうたってヒットをとばすも、ジャニス・ジョプリンらの影響をうけ、ロックをうたうようになりました。日本人として最も、ジャニスに近づいた、稀に見る声の使い手です。
◆村上進(「愛は限りなく」)
イタリア国営放送のオーディションに受かり、活躍しました。日本語の処理を完全にこなした実力派カンツォーネ歌手でした。

1オペラ(8/24のエントリに別に掲載)


カンツォーネ

カンツォーネはイタリアの歌です。とても美しいメロディを持った曲が数多くあります。BGMなどにもよく使われていますので、聴き覚えがある曲も多いのではないでしょうか。
カンツォーネは、美しい声のひびきとともに情感をたっぷりと歌い込んでいます。大きなドラマチックな歌が多いので、トレーニングには最高です。声量・声域とも、ポピュラーミュージックのなかでは最大の技量を要します。バラエティにも富み、世界のポピュラー音楽(特にロック)の源となるリズム、フレーズ、コード進行すべてが含まれているので、基本トレーニングからお勧めしたいものです(イタリア語は、歌いやすいので、まねているうちにうまくなります)。
歌の本場であるイタリアのヴォーカルのさび部分の歌唱を、よく聴いてみてください。
起伏の激しいさび部での声質、ヴォリューム感に注目してください。耳で聴いて覚えて一緒に歌ってみるとよいでしょう。また、テープに合わせて息を吐くのもお勧めです。歌詞を想像してみてください。感性を磨くためのよいトレーニングになるでしょう。
素晴らしい声を支える深い息が見えますか?
特に60年代を中心としたカンツォーネのライブ演奏などは、とても参考になります。
当時は今ほど録音技術が進歩していなかったせいもあって、ヴォーカルが前面に出ています。ブレスの様子が見えるようです。
とにかく「歌で使う声というのはどういうものなのか」をきっちりと聴き取ってください。
声で歌をもっていくというのはどういうことなのか。息はどう流れているのか。
これが世界でいうところの「歌」なのです。

お薦めの曲
1「ヴォラーレ」2「チャオ チャオ バンビーナ」3「アルディラ」4「ロマンティカ」5「愛は限りなく」6「限りない世界」7「恋のジプシー」8「ケサラ」9「忘れな草」10「アディオアディオ」11「ほほにかかる涙」12「君に涙とほほえみを」13「この胸のときめきを」14「強く抱きしめて」15「去り行く今」16「悲恋」17「生命をかけて」18「カンツォーネ」19「君を歌う」20「涙のさだめ」21「愛の詩」22「恋は鳩のように」23「ノアの箱舟」24「ラ・ノビア」25「アモーレ・モナムール・マイ・ラブ」26「ビナリオ」27「クアンド・クアンド・クアンド」28「恋する瞳」29「アモーレ・スクーザミ」30「フニクリ・フニクラ」31「タンゴ・イタリアーノ」32「悲しき恋のテーマ」33「青春に恋をしよう」34「この愛に生きて」35「素敵なあなた」

シャンソン

お薦めの曲
言葉をそのまま、歌にする点で、最も私たちに親しいのがシャンソンです。深い魅力的な声とその使い方に学ぶことは尽きません。名曲のオンパレードです。

お薦めの曲
1「メケ・メケ」2「空と太陽と海」3「恋人たち」4「夜は恋人」5「待ちましょう」6「兵隊が戦争に行く時」7「想い出のソレンツァラ」8「愛は君のよう」9「バラはあこがれ」10「君を愛す」11「行かないで」12「私の孤独」13「おやすみ恋人よ」14「水に流して」15「ある日恋の終わりが」16「わかっているよ」17「幸福を売る男」18「ジュ・テムレ」19「ロマンス」20「詩人の魂」21「ラ・メール」22「アデュー」23「私の心はヴァイオリン」24「サントワマミー」25「ラ・ポエーム」26「ラスト・ダンスは私と」27「人生は過ぎゆく」28「バラ色の人生」

4オールディーズ

5スタンダードナンバーで学ぶ

曲はシャンソンから、ポップス、ジャズのヴォーカリストに広く歌われています。聴き比べながら、オリジナリティや曲の味つけの仕方などを学びましょう。

「枯葉」
イヴ・モンタン
ルイ・アームストロング
エディット・ピアフ
マレーネ・ディートリッヒ
美空ひばり

「バラ色の人生」
ドリス・デイ
ナット・キング・コール
イヴ・モンタン
ジュリエット・グレコ
エディット・ピアフ
6パティ・ペイジ
芦野宏

LD・DVD
ナット・キング・コール
「Lady day-thie many faces of billi holiday」
「アポロ劇場50周年記念コンサート」
「the giants of rock’n’roll」