ウラジーミル・プロップ『昔話の形態学』北岡誠司・福田美智代訳


魔法昔話がすべて限られたプロットによって構成されていることを明らかにした古典である。今回時間がなくてちゃんと読めなかったためメモとして書く。


著者は昔話や物語を研究する際にまず「昔話」とは何かを把握しないで個別研究にむかうのは不毛だという。たとえば一つの昔話を要約する際にすでに恣意性があらわれる。

・・・話の筋は、普通、こんなふうに規定されております。話のなんらかのある部分(それも、しばしば、単に眼についたにすぎず、偶然選ばれた部分)がとりだされ、「・・・に関する」という一句がつけくわえられます。大蛇との闘いが話の中で語られているとすれば、これは、「蛇退治に関する」話であり、コシチェイ〔不死の老人〕が現れる話は、「コシチェイに関する」話などなどというわけです。しかも、ここには、定義に用いられる要素を選ぶ上での単一の原則というものが、ありません。

そこで魔法昔話といわれる百をこえるテクストを対象に研究したところ得られた結論は。以下だという

一、昔話の恒常的な不変の要素となっているのは、登場人物たちの機能である。その際、これらの機能が、どの人物によって、また、どのような仕方で、実現されるかは、関与性をもたない。これらの機能が、昔話の根本的な構成部分である。
二、魔法昔話に認められる機能の数は、限られている。
三、機能の継起的順序は、常に同一である。
四 あらゆる魔法昔話が、その構造の点では、単一の類型に属する。


ここでいわれている機能が以下のものである。

「導入の状況」 α
? 家族の成員のひとりが家を留守にする 「留守」 Β
? 主人公に禁を課す 「禁止」γ
? 禁が破られる 「違反」 δ
? 敵対者が探り出そうとする 「探り出し」 ε
? 犠牲者に関する情報が敵対者に伝わる 「情報漏洩」 ζ
? 敵対者は、犠牲となる者なりその持ち物なりを手に入れようとして、犠牲となるものをだまそうとする 「謀略」 η
? 犠牲となる者は欺かれ、そのことによって心ならずも敵対者を助ける 「幇助」 θ
? 敵対者が、家族の成員のひとりに害を加えるなり損傷を与えるなりする 「加害」 A
?―a 家族の成員のひとりに、何かが欠けている。その者が何かを手に入れたいと思う 「欠如」 a
? 被害なり欠如なりが〔主人公に〕知らされ、主人公の頼むなり命令するなりして主人公を派遣したり出立を許したりする 「仲介」「つなぎの段階」 B
? 探索者型の主人公が、対抗する行動に出ることに同意するか、対抗する行動に出ることを決意する 「対抗開始」B
?? 主人公が家を後にする 「出立」 ↑
?? 主人公が〔贈与者によって〕試され・訊ねられ・攻撃されたりする。そのことによって、主人公が呪具なり助手なりを手に入れる下準備がなされる 「贈与者の第一機能」 D
?? 主人公が、贈与者となるはずの者の働きかけに反応する 「主人公の反応」 E
?? 呪具〔あるいは助手〕が主人公の手に入る 「呪具の贈与・獲得」 F
?? 主人公は、探し求める対象のある場所へ、連れて行かれる・送りとどけられる・案内される 「定義は二つの国の間の空間移動」 G
?? 主人公と敵対者とが、直接に闘う 「闘い」 H
?? 主人公に、標がつけられる 「標づけ」J
?? 敵対者が敗北する 「勝利」 I
?? 発端の不幸・災いか発端の欠如が解消される 「不幸・欠如の解消」 K
?? 主人公が帰路につく 「帰還」 ↓
??? 主人公が追跡される 「追跡」 Pr
??? 主人公は追跡から救われる 「救助」 Rs
??? 主人公がそれと気付かれずに、家郷か、他国かに、到着する 「気付かれざる到着」 O
??? ニセ主人公が不当な要求をする 「不当な要求」 L
??? 主人公に難題が課される 「難題」 M
??? 難題を解決する 「解決」 N
??? 主人公が発見・認知される 「発見・認知」 Q
??? ニセ主人公あるいは敵対者(加害者)の正体が露見する 「正体露見」 Ex
??? 主人公に新たな姿形が与えられる 「変身」 T
??? 敵対者が罰せられる 「処罰」 U
???? 主人公は結婚し、即位する 「結婚」 W