『汎用RPGルールブック ガープス・ベーシック 第三版』スティーブ・ジャクソン、佐脇洋平とグループSNE編訳、角川スニーカー文庫

ガープスとはスティーブ・ジャクソン社から出ているTRPGのルールブックだ。

ガープスGURPS)とは、包括的で汎用的なロールプレイング・システム(Generic Universal Role Playing System)の頭文字をつなげたものです。

ガープスの基本システムは、リアリティーに重点を置いてデザインされています。そのため、考えられるすべての状況―ファンタジーから現実世界のシミュレーションまで、過去、現在、未来のいかなる状況―にも対応できるようになっています。

あなたの世界の西部劇のガンマンを、第二次大戦の特殊部隊隊員とともに、ファンタジー世界に送りこむことだってできるのです。


TRPGのメインの舞台となるファンタジーやSFの舞台だけでなく、現実のそれなりにリアリティのあるシミレーションまで同じルール上で可能というのが売りで、自分もその現実のリアリティをかなり再現しているところに惹かれている。


キャラクターは様々な特徴と技能を、CP(キャラクターポイント)というものを消費してとり、個性をつくっていく。このCPの合計がそのキャラクターの総合的な能力で、25CPなら平凡、75CPならトップアスリート並、100CPなら英雄候補、のようになる。このCP合計が同じならばどのような個性をつけても総合的な能力は同じ有用性をもつ、というコンセプトでガープスのキャラクターメイキングはデザインされている。

ガープスのキャラクター作成システムは、「バランスのとれた」キャラクターを作るためのものです。つまり、キャラクターの長所と短所を総合すれば、いずれのキャラクターも同じような能力を持っているということです。100CPで作られたキャラクターは、どんなにかけはなれているように見えても、その総合的な能力は同じなのです。


非常に多くの特徴や技能が面白い。怠惰の説明には自分をふりかえって納得してしまったり、誠実などゲーム的に足かせになりそうなものは不利な特徴として位置づけるという視点も面白い。また機械工という技能ではそれの専門領域を選択しなければならないが、その種類も自分のうとかった機械関係への興味の手がかりを得たようで面白い。

怠惰

あなたは肉体的な労働を心から嫌っています。職業がなんであるにせよ、昇進や昇給の可能性は半分になります。自由業の場合は、収入が半分になります。あなたは、とにかく仕事を―特に疲れる仕事を―できるだけ避けようとするのです。

誠実

あなたは絶対に法律を守り、他人にも守らせようとします。法律がほんのわずかしか定めされていない地域や、まったく法律のない地域でも、あなたは自由に行動できるわけではありません。自分の家庭での慣習などを法律とみなしてください。それがあなたの行動に制限を加える限りは、誠実さは「不利な」特徴だと言うことができます。

機械工/文明・種別(精神/並) 技能なし値:知力−5、技師−4
自動車のエンジンなど、機械的な道具の修理を行なう技能です。分野ごとに異なる技能としてあつかいますから、以下の分野のどれかに専門化してください。
馬車/蒸気機関/時計などの小機械/小型モーター/ガソリン・エンジン/プロペラ・エンジン/ジェット・エンジン/ホーバークラフト・エンジン/パワー・セルおよび大型モーター/船舶の推進機関/惑星間宇宙の推進機関/恒星間宇宙船の推進機関/ロボット


ファンタジーから現実の機械から恒星間宇宙船までを同じ機械工であらわすような姿勢は笑うと同時に、このゲームをデザインしたスティーブ・ジャクソンがある種の度をこえた―たががゲームと考えていない―現実・虚構世界をふくめた巨大な全体性をこのゲームによってものにしようとしている情熱が感じられてしびれる。こういう人が出てくるとはアメリカは広いと思わされる。


氷河期時代から、平安日本、西部劇の時代に、大戦のマス・コンバットまで可能なガープスは文明レベルという形でそれぞれの時代の区分けをしている。

文明レベル0

概要:石器時代。火、梃子、言語。
移動手段:徒歩
エネルギー:人力
武器:素手と石器
医療:なし

文明レベル1

概要:青銅器時代。車輪、文字、農業
移動手段:馬車と帆船
エネルギー:水車
武器:先端が金属の槍と矢、青銅の剣、革鎧
医療:薬草

文明レベル2

概要:鉄器時代
移動手段:外洋ガレー船
エネルギー:風車
武器:鉄の剣、盾、スケイルアーマー
医療:瀉血、化学薬品

文明レベル3

概要:中世(〜一四五〇年)。鋼鉄、数字のゼロ
移動手段:外洋帆船
エネルギー:馬力
武器:鋼鉄の武器、フレイル、弩

文明レベル4

概要:ルネサンス/植民時代(一四五一〜一七〇〇)。火薬、印刷術
移動手段:大型帆船、熱気球
エネルギー:とくになし
武器:マスケット銃、大砲、帆走軍艦
医療:さまざまな人体実験

文明レベル5

概要:産業革命(一七〇一〜一九〇〇)。大量生産、蒸気機関、電信器
移動手段:蒸気船、鉄道、大型気球
エネルギー:大型蒸気船、直流電気
武器:鋼鉄の軍艦、ダイナマイト、連発銃
医療:細菌の発見。麻酔、ワクチン

文明レベル6

概要:世界大戦(一九〇一〜一九五〇)。自動車、航空機、ラジオ
移動手段:自動車、航空機、潜水艦
エネルギー:水力発電、交流電気
武器:戦艦、戦車、機関銃、戦闘機、原爆、フラック・ジャケット
医療:外科手術、抗生物質

文明レベル7

概要:現代(一九五一〜二〇〇〇)。核エネルギー、コンピュータ、レーザー、ロケット
移動手段:ジェット機、スペース・シャトル、リニアカー、ホーバークラフト
エネルギー:核分裂、核熱融合、太陽発電
武器:核ミサイル、原潜、ジェット機、ケヴラー
医療:移植

文明レベル8

概要:宇宙時代(二〇〇一〜二〇五〇?)。宇宙旅行核融合
移動手段:宇宙船、大陸間ライナー
エネルギー:軌道上で集めた太陽エネルギー
武器:サイボーグ戦車、軌道レーザー、生物兵器、バトルスーツ、磁気ニードル銃
医療:クローン、バイオニック

文明レベル9

概要:恒星間時代。超光速宇宙船、人工知能、長命術
移動手段:恒星間宇宙船
エネルギー:常温核融合
武器:熱線銃、粒子加速砲、スタナー
医療:長命術、完全免疫、仮死、自動治療


このガープスは3版の抄訳で、角川スニーカー文庫で自分が十代のときにでていた。このような常軌をいっしたトータリティへの欲望につらぬかれたゲームにふれたことがTRPGにはまる決定的な要因だったのはまちがいない。こういうものを文庫展開で多く出してくれていた当時の角川の資本戦略には敬意を表したくなる。


今は4版でガープス・ベーシック完全版はでているが、上下巻合わせて九千円強である。でも和訳があるだけありがたい。次の給料日でそれを買うので、その前に3版文庫版の研鑚をあげておく。


ちなみに自分でもゲームと現実の区別がつけてない感がするのだが、ガープスの全体性への志向に感銘をうけ、次のエントリーに引用した用語をウィキペディアでひとつひとつ眺めていくことで、この世界や社会の全体性をつかむ手がかりになりそうな気がして、やってみるつもりでいる。こういうことでもないと機械工の諸種別や、軍隊の階級や様々な銃器とかにはまったく興味をもっていなかったから。