研鑚

ロック『市民政府論』鵜飼信成訳、岩波文庫

必読書150には入ってないが、ルソーを読むとロックも読みたくなる。ロックを読むとモンテスキューも読みたくなるが、『法の精神』は長いので覚悟がいる。それよりはロックの『市民政府論』は短いので手にとりやすい。 解説からひく。 ジョン・ロック(Joh…

『汎用RPGルールブック ガープス・ベーシック 第三版』スティーブ・ジャクソン、佐脇洋平とグループSNE編訳、角川スニーカー文庫

ガープスとはスティーブ・ジャクソン社から出ているTRPGのルールブックだ。 ガープス(GURPS)とは、包括的で汎用的なロールプレイング・システム(Generic Universal Role Playing System)の頭文字をつなげたものです。ガープスの基本システムは…

モンテーニュ『随想録<エセー>』松浪信三郎訳

今度は文庫本6冊分である。去年はこれとホッブス『リヴァイアサン』でおわってしまった。 ミシェル・ド・モンテーニュは一五三三年二月二十八日、父ピエール・エイクェムと、母アントワネットとのあいだの第三子として、エイクェム家の貴族領モンテーニュの…

ハンス・アビング『金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか』山本和弘訳

柄谷行人の書評(http://book.asahi.com/review/TKY200702270223.html)などで興味をひかれ読んだ。岡田暁生『西洋音楽史』もそうだったが、目から鱗の指摘を読み進みながら同時に以前から直観はしていたがううまく言葉にできず居心地のわるさを感じていた問…

荻上チキ『ウェブ炎上』

著者からいただいた。あとがきにも謝辞をもらい、最近はそれに足るようなこともしてなくて申し訳ないかぎり。せめて真面目に書評をしてみる。 著者はこの本の狙いを以下の三点だという。 「インターネットのある世界」は、技術や慣習、価値観、ことば、思想…

浅沼圭司『ゼロからの美学』

大学の時の先生で、凄い先生だという評判も聞いていた。しかし授業はとらず卒業してしまい、今ごろふとこの本を見つけ読んでみた。 学部生向けの美学の入門的な授業をもとに書かれたもので、とても平易に美学について解説されている。美学については特に音楽…

岡田暁生『西洋音楽史』

宮崎哲哉や稲葉振一郎など人文学的な論者からの高い評価が目立っていた本で、中公新書ということで手軽ということもあって読んでみた。 至高である(感化されやすすぎな馬鹿であるともいう)。 著者は西洋音楽史を書くにあたっての基本方針を以下のように述…

仲正昌樹『松本清張の現実(リアル)と虚構(フィクション) あなたは清張の意図にどこまで気づいているか』

久しぶりに文学の研究書を読んだ。研究書とは言っても一般の読書人が楽しんで読める啓蒙的な本でもある。またビジネス社からの出版で定価952円は安い。お買い得であると思う。 思想史においてオーソドックス(変な奇をてらわない)かつ本格的な(最も重要…

北田暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』

北田暁大氏の本は二冊位しか読んでいないのだが(内『責任と正義』を読んだときの完敗っぷりは以前に書いた)、それぞれの本や論考で私にとってはきわめてビビットなキーワードが見出されるのが大きな魅力になっている。 例えば対談などで話している中で要約…

稲葉振一郎『経済学という教養』

この本は「人文系ヘタレ中流インテリ」に向けられた経済学の啓蒙書であり、現在の社会体制を基本的に肯定する担い手の一人として、知的分業や社会活動を通して公共性を維持していくモチベーションを与えようとするアジテーションの書でもある。 著者はこの本…

福島英『ポピュラー・ミュージックのためのヴォーカルトレーニング』

福島英は、ブレスヴォイストレーニング研究所の代表でその名の通り「ブレスヴォイストレーニング」というメソッドを考案して、ヴォーカリスト志望者、役者志望者、声優志望者などのヴォイス・トレーナーとして活動している。 とてもたくさんの著作を出してい…

北田暁大『責任と正義』

最初の二章位を読んだ段階でこれほどの敗北感を感じたのは久しぶりである。普段啓蒙書中心にしか本を読まないせいだが、北田暁大氏の『責任と正義』は、当たり前だが社会学の(なんだろうか、それすらはっきりしない)知識を読者がもっているという前提で書…

玄田有史『仕事の中の曖昧な不安』

この本は稲葉振一郎氏のホームページ上で、「著者の篤実で暖かい人柄がしのばれる、こまやかな心遣いに充ちた好著」と紹介されていたので興味をもって読んだ。 この本の主題を玄田氏はこう述べる。 この本の最大の主張は、中高年の雇用という既得権が若年か…

宮台真司他『バックラッシュ!なぜジェンダーフリーは叩かれたのか』

「この本は、ジェンダーフリー教育や男女共同参画社会へのバッシング、いわゆるバックラッシュを「嗤」いつつ、次なる局面に進むためのサーチライトを掲げるためにつくられた」というまえがきこの本は始まる。 つまり「ジェンダーフリーへのバックラッシュ」…

後藤雅洋『ジャズ喫茶のオヤジはなぜ威張っているのか』

[研鑽]では一冊の本を中心に後から考察で使う引用を列挙しながら書いて考えていく。 大学の時からジャズや音響系の音楽などに詳しい音楽通、あるいは音楽スノッブの方々に対して、違和感と畏敬の念を持ちつづけた。 違和感は「なぜこんなに偉そうなのか、別…